2006年10月18日

黒い家・黒い本

10月16日の日記に何気なく「古い下町の黒っぽい町並み」という表現を使ったが、町並みが本当に「黒い色」という訳ではない。イメージとしての「黒」だった。

柳田國男が「清光館哀史」で、清光館のことを「黒い」と表現している。

―――あんまりくたびれた、もう泊まろうではないかと、小子内の漁村にただ一軒ある宿屋の、清光館と称しながら、西の丘に面してわずかに四枚の障子を立てた二階に上がり込むと、はたして古くかつ黒い家だったが、若い亭主と母と女房の親切は、予想以上であった。―――

―――おとうさん。今までの旅行のうちで、一番わるかった宿屋はどこ。
そうさな。別に悪いというわけでもないが、九戸の小子内の清光館などは、かなり小さくて黒かったね。―――

古書の業界用語では「黒い本」というと、単なる中古本ではなく、時代を経た、ある程度価値の在る本をさすらしい。

「黒幕」「腹黒い」などという言葉があるように、「黒い」には「悪い」「汚い」という意味を表すことがあるが、この場合の「黒い」は、そういうネガティブな意味ではなく、むしろ年月を経過したことによって醸し出された味わいを「好ましいもの」とするニュアンスを含んだ表現のような気がする。

ところが、改めて辞書を引いてみても、「黒い」にそんな意味は載っていないのだった。
posted by HANA at 13:04| 旧FC2ブログ